法学部の志望理由書 例文800字|題材の見つけ方と構成テンプレ
監修:エクシオアカデミー 教務部
法学部の志望理由書は、800字であれば4段落構成で書きます。配分の目安は、導入(きっかけ)が全体の1割程度の80字、問いと社会的意義が200字、自分で調べて分かったことが270字、限界と大学での学修計画が250字です。法学部特有の難所は、題材を「社会問題」のまま書いてしまい、法学や政治学という学問の装置を通していない点にあります。この記事では、法・政治系の題材をどこから見つけ、どう論理を組み立てて800字に収めるかを、注釈つき例文とNG例を使って具体的に示します。
法学部の志望理由書はなぜ「解決策」から入ると評価が下がるのか
法学部志望の志望理由書で最も多い失敗は、「〇〇という問題を解決したい」という一文から書き始めてしまうことです。解決策の提示は制度設計や政策立案という実務の領域であり、大学で行う研究はまず「なぜその問題が生じているのか」という説明が先に来ます。たとえば少年法の厳罰化を扱うなら、「厳罰化すべきだ」という結論を急ぐのではなく、現行の少年法がどのような立法趣旨を持ち、実際の運用でどのような議論が生じているのかを、条文と学説の対立から説明する姿勢が求められます。
法学部の志望理由書は、研究計画の縮約版として読まれます。問い・その意義・自分でどこまで調べたか・何が明らかにできなかったか・その限界を埋めるために何を学ぶか、という5つの要素がそろって初めて、感想文ではなく学修計画として評価されます。このうち法学部に特有なのは、対象(現象そのもの)と装置(それを説明する学問上の枠組み)を分ける作業です。
対象と装置を分けるとは具体的にどういうことか
法学と政治学は、同じ社会問題を扱っても見ている装置が異なります。法学は条文の文言・立法趣旨・判例・学説という体系を通して、ある行為が適法か違法か、権利がどこまで保護されるかを論じます。政治学は、制度・権力関係・利害調整のプロセスを通して、なぜその制度が形成され、どの主体がどう動いているかを論じます。
同じ「インターネット上の誹謗中傷」というテーマでも、法学の装置を使えば名誉毀損の成立要件や表現の自由との調整という論点になり、政治学の装置を使えばプラットフォーム事業者の規制をめぐる国会での議論や国際比較という論点になります。志望理由書を書く前に、自分が関心を持つ現象をどちらの装置で説明したいのかを決めておくと、志望学科や志望理由書内の論理が一貫します。この見極めができていない書類は、現象の紹介だけで終わり、関心の表明にとどまってしまいます。
アドミッションポリシーを読み込む段階でも、この装置の違いを意識すると大学ごとの特色が見えやすくなります。出願校を絞り込む際は、アドミッションポリシーの調べ方と読み解き方も参考にしてください。
構成テンプレート(800字の配分)
800字の志望理由書は、以下の4段落構成が基本です。原体験の記述を全体の1割程度に抑え、思考の過程に字数を残すことがポイントです。
| 段落 | 内容 | 字数目安 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 導入(問題意識を持ったきっかけ) | 約80字 | 10% |
| 2 | 問いの設定と社会的意義 | 約200字 | 25% |
| 3 | 自分で調べた内容と分かったこと | 約270字 | 34% |
| 4 | 明らかにできなかった点と大学での学修計画 | 約250字 | 31% |
この配分は、法学部に限らず志望理由書全体の基本形に近いものですが、法学部では第3段落に「条文・判例・学説のどれをどう調べたか」を具体的に書き込めるかどうかで評価が分かれます。600字や1000字など字数が異なる場合の配分は志望理由書1000字の書き方や自己PR800字の書き方の配分テンプレも参考になります。
法・政治系の題材はどこから見つけるか
法学部志望の受験生が題材選びでつまずく理由は、身近な経験だけから出発しようとする点にあります。個人的な経験だけでは感想文になり、社会の出来事だけを論じると他人事の評論になってしまいます。両者をつなぐ手順は次の通りです。
- 新聞やニュースから、自分が引っかかりを覚えた出来事を1つ選び、なぜ引っかかったのかを自分の経験と結びつけて書き出す
- その出来事に関係する条文を六法やe-Govなどの公的な条文検索で確認し、立法趣旨を自分の言葉で要約する
- 同種の事案に関する判例を1〜2件探し、裁判所がどのような基準で判断したかを整理する
- 学説の対立がある場合は、どちらの立場にも根拠があることを確認し、自分がどちらに説得力を感じたかをメモする
- 自分で調べても結論が出ない論点(統計データの不足、判例が分かれている、立法段階の議論が未成熟など)を書き出しておく
最後の工程が、志望理由書の第4段落で使う「限界」の材料になります。限界は「力不足でした」という反省ではなく、個人で調べる段階では埋められなかった条件として書くことで、大学で学ぶ必然性につながります。
注釈つき例文
志望理由書は「だ・である」の常体で書きます。以下は架空の受験生が、インターネット上の誹謗中傷と表現の自由をテーマに書いた800字の例です。実在の大学名・学部名は伏せ字にしています。
①高校2年生のとき、クラスメイトがSNS上で根拠のない噂を書き込まれ、学校に来られなくなる出来事があった。この経験から、なぜ匿名の発信者の責任を問うことが難しいのかという疑問を持った。②表現の自由は民主主義社会の基盤であり安易に制限すべきではない一方、個人の名誉やプライバシーをどこまで保護すべきかという調整の問題は、裁判例でも判断が分かれているのではないかと考えた。③そこで民法上の不法行為に基づく名誉毀損の成立要件と、プロバイダ責任制限法による発信者情報開示の手続きを自分で調べた。発信者情報の開示には一定の要件を満たす必要があり、被害者側の立証負担が重いことが確認できた。また複数の裁判例を比較したところ、表現の公共性や公益目的の有無によって違法性の判断が分かれていることが確認できた。④一方で、開示請求の認容率が制度改正後にどう変化したかについては、公表されている統計だけでは十分に把握できず、自分の力では明らかにできていない。また海外のプラットフォーム規制との比較についても、法制度の前提が異なるため単純に優劣を論じられないのではないかと考えた。〇〇大学△△学部では、民法と情報法の双方を体系的に学べる科目が用意されており、演習を通じて判例研究の方法を身につけたいと考えている。表現の自由と人格権の調整という論点について、条文解釈と実証データの両面から考察を深めたい。
①が導入、②が問いと社会的意義、③が自分で調べた内容と分かったこと、④が明らかにできなかった点と大学での学修計画に対応しています。③では「確認できた」という事実の断定と「考えた」という仮説の断定を書き分けている点、④では統計上の限界と法制度の前提の違いという2種類の限界を分けて書いている点が、この例文の構造上の工夫です。
法学部志望でよくあるNG例
- 「人権を守る仕事がしたい」など抽象的な動機で終わる:抽象的な言葉だけでは、どの法分野のどの論点に関心があるのかが読み手に伝わらず、研究計画としての具体性を欠く
- 死刑制度や憲法改正など賛否が割れるテーマで、自分の意見の正当化だけに終始する:学問的な検証の手続きを経ずに結論を主張すると、調べた過程が読み取れず説得力を欠く
- 対象(いじめ・貧困などの社会問題)だけを述べ、法学や政治学の枠組みに触れない:現象の紹介にとどまり、大学で学ぶ必然性が示せない
- 部活動や委員会活動でのトラブルなど原体験の描写に字数の3割以上を使う:思考の過程に残せる字数が減り、調べた内容や限界が書けなくなる
- 条文番号や判例名を誤って引用する:法学部の書類では事実確認の正確さそのものが評価の対象になり、誤りは致命的に見える
題材探しから清書までの手順と時間配分
法・政治系の題材は、調べる順序を間違えると時間がかかりすぎます。以下の手順を目安にすると、着手から初稿完成までを計画的に進められます。
| ステップ | やること | 目安時間 |
|---|---|---|
| 1 | ニュース・新聞から社会的な出来事を1つ選び、自分の経験との接点を書き出す | 30分 |
| 2 | 関連する条文を確認し、立法趣旨を自分の言葉で要約する | 30〜45分 |
| 3 | 判例・学説を2〜3件調べ、論点の対立を整理する | 60〜90分 |
| 4 | 問いを一文にまとめ、調べても分からなかった点を書き出す | 30分 |
| 5 | 構成テンプレに沿って下書きを作成する | 60分 |
| 6 | 第三者の添削を受け、論理の飛躍や誤りを修正する | 複数回 |
出願まで時間が限られている場合の進め方は志望理由書が間に合わない時の書き方にまとめています。また、評定に自信がない場合でも一貫した問いの立て方が評価につながる点は逆転合格を支える志望理由書で解説しています。
面接で深掘りされたときの答え方
法学部の面接では、志望理由書に書いた判例や学説について、より踏み込んだ質問が来ることがあります。たとえば「その判例で裁判所が重視した基準は何ですか」「その学説を選んだ理由は何ですか」といった質問です。これは書類の口頭確認であり、ゼミでのやりとりに近いものなので、用意した回答を丸暗記するのではなく、自分の問いを別の聞かれ方をされても説明できる状態を作っておくことが重要です。
面接では敬体で話します。たとえば次のように答えます。
「私が調べた判例では、表現の公共性と公益目的の有無が違法性の判断を分ける基準になっていました。ただ、この基準だけでは個別の事案によって判断が揺れる部分もあると感じたので、大学では複数の判例を比較しながら、基準がどう運用されているかを継続して調べたいと考えています。」
この回答は、調べた事実と残っている疑問を分けて話している点が特徴です。自己推薦書と志望理由書の役割分担に迷う場合は自己推薦書と志望理由書の違いも参考にしてください。
よくある質問
法学部志望なのに政治学の話題を書いてもよいか
法学部の中には政治学科や国際政治学専攻を併設している学部もあり、その場合は政治学の装置で書いても問題ありません。ただし出願する学科・専攻がどちらの学問を中心に教えているかは大学ごとに異なるため、募集要項やカリキュラムで確認したうえで、志望理由書内の論理を一方の装置に統一してください。
判例や学説をどこまで正確に書く必要があるか
条文番号や判例の結論を誤って引用すると、調べた内容そのものの信頼性が疑われます。公的な条文検索や大学図書館のデータベースなど一次資料で確認したうえで書き、自信が持てない細部は「〜と報告されている」のように出典のある事実として書くか、断定を避けてください。
青山学院大学や早稲田大学など法学部の自己推薦・総合型選抜ではどこまで同じ書き方でよいか
基本の5要素(問い・意義・調べたこと・限界・学修計画)は共通ですが、求める人物像や評価の重点は大学ごとに異なります。青山学院大学法学部 自己推薦入試の対策や早稲田大学法学部の自己推薦入試のように大学別の対策記事も合わせて確認し、出願する学部の公式の募集要項で最新の出願要件を必ず確認してください。
まとめ
- 法学部の志望理由書800字は、導入1割・問いと意義25%・調べた内容34%・限界と学修計画31%という4段落構成が基本である
- 対象(社会問題そのもの)と装置(法学・政治学という学問の枠組み)を分けて書かないと、関心の表明にとどまってしまう
- 解決策の提示から入らず、まず「なぜ生じているのか」を条文・判例・学説の調査から説明する
- 自分で調べても分からなかった点を反省ではなく条件として書くことで、大学で学ぶ必然性が生まれる
- 面接は書類の口頭確認であり、暗記した回答ではなく、自分の問いを説明できる状態を作っておくことが重要である
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この記事の監修者
エクシオアカデミー 教務部
監修責任者:代表講師 髙久大輝
総合型選抜・学校推薦型選抜の指導を担当する教務部が、公開前に内容を確認したうえで掲載しています。年度で変わる入試情報は断定を避け、必ず大学公式の募集要項の確認をご案内しています。